日本でもようやく認知され始めたEAP。本場アメリカのEAPとは10年以上の隔たりがあると言われるが、それは、日本ではメンタルヘルス・ケアと結びつくことで、ようやくサービスが普及してきたからだ。
アメリカのEAPは「個人的な問題」や「組織的な問題」を短期間に解決することで企業や組織の生産性を向上させるサービスとしてすでに広く普及している。そのため、費用対効果が詳細に検討され、コアとなる技術も確立されている。
日本のEAPがこれから発展していくために、アメリカに学ぶべきことは何なのか。心理学は産業分野でどのように活かせるのか…。アメリカで活躍するEAP専門家十数名が著した本書には、そのためのヒントが満載されている。
■編者/ジェームス・M・オハー
オハー・アンド・アソシエイツ社代表、EAP実践の専門家。EAPが産業分野で果たす役割をさらに拡充していくため、同業の専門家に呼びかけて本書を編集。
■監訳/内山喜久雄(筑波大学名誉教授、医学博士)/島 悟(東京経済大学教授、神田東クリニック 院長、日本EAP協会 会長、精神科医)
産業界、企業、あるいは職場は日常さまざまな課題を抱えているが、生産性の向上と従業員の心身の健康の維持・増進はその中でも最優先課題といってよい。EAP(Employee Assistance Program)はまさにこの両者を主目標としており、キャリア開発プログラム(CDP)と並んでアメリカの産業カウンセリング領域で大いに注目されている制度である。
第2次世界大戦下のアメリカで、アルコール依存従業員への対策に端を発したEAPはその後、同国のEAP協会によると、アメリカで1950年の50社から1988年には12,000 社へと急成長し、その後も増加の一途をたどっている。近時、我が国でもとみにEAPへの関心が高まり、実践への機運も上昇中ではあるが、生産性、メンタルヘルス等の諸側面の向上という点では今後なお克服すべき課題が多い。
本書「EAPハンドブック」は1999年、アメリカで公刊され、最近の研究・実践情報を収載したEAP 関係書で、編者はニューヨークのEAP会社のジェームズ M. オハー社長である。本書編集の経緯や趣旨等は巻頭の編者序に述べられているように、EAPの意義について、「生産性と健康に影響を及ぼす個人的問題を防止し、解決し、特定する職場関連資源」と位置付け、その内容としては、本書の随所にみられるように、職場構造に適合した、しかも実行可能かつ革新的なサービスの創出について詳述した上で、その具体例も記載しており、理論的研究と並行して、実践を目指す人々にとって示唆に富むものとなっている。
本書では最先端のEAPプログラミングを提示する一方で、健康と生産性、両者の向上へのEAP の貢献についても強調しているので、新しいEAPのスキルとサービスについてのノウハウも多く期待できるだろう。
ひるがえって、我が国の現状を見ると、経済・産業領域でも種々の問題が山積し、配置転換、過重労働、職場ストレス、対人関係不調、リストラによる失職、等は当然のことながら個人のメンタルヘルス状況にも反映し、生産性の低減にもつながりやすい。EAPの意味を再検討し、職場の生産性の向上とメンタルヘルスの回復、維持、増進を図る上で本書が役立つことができれば関係者として望外の喜びである。
2005年7月
監訳者 内山 喜久雄
島 悟
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