労災認定要件からわかる働く人のストレス要因(7_会社ができるメンタル労災対策)

ここまでで、どのような出来事が働く人のストレス要因になるかを見てきました。それでは、これらの出来事を起こさないために、会社は何をすべきでしょうか。

会社が取り組むべきこと

最優先して取り組むべきものはもちろん「特別な出来事」と「特別な出来事以外」の「Ⅲ」の出来事についてです。これが該当すれば心理的負荷の総合評価が「強」と判断されるためで、ほかに要因がなければ労災となります。

現在該当することが起きていないかを調査します。なお、労災申請の時効期限は内容によっては最大5年後まで可能です。そのため過去に遡って調査する必要もあるのです。そして未来に向けて起こらないようにするための対策と方針を決め、実行に移します。

また「特別な出来事以外」で心理的負荷の平均値が「Ⅰ」「Ⅱ」の出来事でも、残業時間の条件が重なれば、場合によっては「強」と判断される可能性もあるため、「Ⅰ」レベルの出来事があったとしても見過ごさず、対策をすることをお勧めします。

「特別な出来事以外」には、転勤・配置転換といった業務上避けられない出来事も含まれています。その場合は、該当する従業員に対してその出来事がストレスになることを理解した上で、転勤・配置転換であれば打診するのを早めにしたり、フォローを厚くしたりするなど、メンタルケアのための工夫をルール化する必要があります。

従業員同士のトラブルについて

「特別な出来事以外」の中には、同僚や部下とのトラブルも定義されていることから、たとえ新入社員であっても、労災につながるような出来事を起こしてしまう可能性があります。

また別の問題として、解雇や評価が下がることを恐れて、被害を受けている、あるいは被害を知っていても黙っている従業員がいる可能性もあります。

いくら会社が調査や対策をしても、従業員同士がトラブルを起こしたり、顕在化していない出来事があるのであれば、労災のリスクをなくせません。ではどうしたらよいのでしょうか。

全従業員向けの教育研修のすすめ

こういった場合に有効なのが、従業員を絞り込まず、全従業員に対して教育研修を行うことです。

全従業員がメンタル労災を防ぐための教育研修を受けることで、会社側の「メンタル労災を許さない」という姿勢を全従業員に見せることができます。そうすることで、従業員側は労災につながる出来事を起こさないように意識するようになっていきます。仮にすでに出来事が起きてしまっている場合も、会社的にも社会的に許されないことなのだと分かれば、会社へ通報する勇気にもつながるでしょう。

全従業員が安心して働けるような風土を築くには、会社主導で全社員に教育研修を行うことが重要です。教育研修を受けて終わりではなく、教育研修の内容を復習したり、グループで実際に労災のリスクがあると思うことを挙げて、話し合う機会を設けてみるのもよいでしょう。