ストレスチェックの集団分析で職場環境改善

ストレスチェックを実施するだけで、集団分析をしても結果を放置したりしていませんか。

ストレスチェックの集団分析結果は現状の把握のみならず、職場の強みと弱みに関する重要な情報が詰まっています。これを職場環境を改善するヒントとして活用してみましょう。「集団分析をどう活用すればよいかわからない」、「職場改善の方法が分からない」という人事担当者のために、今回はストレスチェックを活かした職場改善についてお話しします。

仕事に対する「やらされ感」蔓延していませんか

例として、ストレスチェックの個人結果・集団分析結果にある尺度である「仕事の量的負担」と「仕事のコントロール」を活用します。

「仕事の量的負担」は、業務量がどれくらい負担感になっているのかを示す指標です。業務量が多くなればなるほど、負担感が増え、様々な不調が出てきます。

「仕事のコントロール」は、業務を進めるうえで、自分のペースで仕事ができるかを表します。この数値が低いと、自分のペースで仕事ができないので、ストレスを感じやすくなります。

業務量が多く、自分のペースで仕事ができないのであれば、多くの社員は「やらされ感」を持つようになります。それが続くと、モチベーションにも影響することは容易に想像がつきますよね。

このように、これらの2尺度を見るだけでも、社員の仕事でのストレスの大きさや原因がわかるわけです。

「サポート」と「コミュニケーション」を見直す

二つ目の例として、「上司からのサポート」と「同僚からのサポート」の尺度を活用します。

仕事をする以上、ある程度のストレスはつきものです。そのストレスを和らげる要因(緩衝要因)になるのが「サポート」なのです。サポート不足の原因の多くは、コミュニケーションが足りなかったり、コミュニケーションの方法が適切でなかったりすることにあります。サポートが低いという結果が出ている場合は、上司と部下、同僚間でのコミュニケーションの方法や、サポート体制について見直してみましょう。

サポート体制の見直しに加えて、新たに「コミュニケーションをとる機会や場を創ること」も効果があるといわれています。

事実、コミュニケーションに関する心理学の研究では、適切なコミュニケーションを行っているグループにおいてモチベーションや生産性が高まることが判明しています。業務量のコントロールは難しくても、コミュニケーションについては比較的取り組みやすく、かつ効果的であると言えます。

実際のカウンセリングでも、「上司とのコミュニケーションの方法が分からない…」、「部下が何を考えているのか分からない…」、「誰に相談していいのか分からず相談できない…」といったご相談をよく受けます。個人でできることには限界があるため、職場が主体となって、コミュニケーションやサポート体制を見直すことが必要ではないでしょうか。

「健康リスク値」は職場の救難信号

健康リスク値は日本全国の職場と比較して、どれくらい心身の不調が発生する確率が高いか、低いかが分かる指標です。全国の平均は100となっています。

例えば、職場全体の健康リスク値が120であれば、ストレス反応(憂鬱な気分や不安)、医療費、疾病休業が通常の20%増で起こると予想される状態となります。逆に健康リスク値が80であれば、それらが20%低いと予想される状態、つまり比較的安全な職場であると考えられます。

健康リスク値は、この数値を超えたら危ないという基準値は明確にはありません。そのため、経年比較をして、急に高くなっていないかを確認しつつ、徐々に低くなっていくことを目標にすると良いでしょう。

属性別にみる「健康リスク値」

健康リスク値を属性別に把握できれば、事業場ごと、部署ごと、年齢別、性別など、どの属性にどういった支援が必要かを判断できるようになります。

健康リスク値がほかの属性に比べて高い属性は、早期に対応するべき属性と判断できます。早期対応によって、その属性でのトラブルや問題の発生の連鎖を防ぎまましょう。

まとめ

以上のような視点を持つことがポイントです。ストレスチェックの集団分析結果を活かし、職場の強みとなっている部分は継続しつつ、職場の弱みとなっている部分を認識・改善することによって、より働きやすい職場環境づくりを進めていきましょう。