プレゼンティーイズムとパフォーマンス

近年、プレゼンティーイズムとアブセンティーイズムが話題になっています。今回はプレゼンティーイズムを中心に、従業員のパフォーマンスについて解説しています。

プレゼンティーイズムとは

プレゼンティーイズム(presenteeism)とは、何らかの体調不良を抱えながらも出勤して働いている状態のことです。

体調不良とは、メンタルヘルスの不調だけでなく、風邪、花粉症、頭痛、首の痛み、肩こり、上背部の痛み、腹痛、腰痛、ひざ痛、めまい、倦怠感など、通院の有無や病名の有無に関わらず広く含まれます。

一方で、アブセンティーイズム(absenteeism)は、体調不良で休んでいる状態のことです。

プレゼンティーイズムは何が問題なのか

「プレゼンティーイズムでも一応出勤はしているのだから、アブセンティーイズムで休んでいるよりは良いのでは?」と感じるかもしれません。

しかし、そうではありません。ご自身の職場を見渡してみてください。どういう理由であれ休んでいる人の割合は、多い日でも1割程度ではないでしょうか。休んでいる人の中には、子供関連の休みや余暇の休みもあるはずです。そのように体調不良ではない人もいることから、実際に体調不良での休み、つまりアブセンティーイズムは1割未満でしょう。

反対に、残りの9割の出勤している人のうち、すべての人が100%のパフォーマンスで働けているはずはありません。体調不良がある人の割合もそのパフォーマンスの低下率も未知数です。プレゼンティーイズムは、従業員の9割に当てはまる可能性があります。そのため、プレゼンティーズムの問題は深刻なのです。

健康関連総コストで見るプレゼンティーイズム

健康関連総コストとは、医療費だけではなく、労働生産性に係わる損失も含んでいる指標です。

健康関連総コストでみると、医療費は全体の15.9%に過ぎず、79.1%がプレゼンティーイズムによるものという試算も出ています。(アブセンティーイズムはごくわずか3.7%)

データヘルス・健康経営のための コラボヘルス ガイドラインのp.91
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000171483.pdf

プレゼンティーイズムは、労働生産性の損失(間接費用)として、医療費やアブセンティーイズムよりも圧倒的に大きな問題になっているのです。

パフォーマンスの低下を感じたら

「休むほどではない」とプレゼンティーイズムの状態で出勤してしまうと、パフォーマンスが悪くなるという研究結果があります。

Sara Elsayed Ahmed, Karima Ahmed El Sayed, Lobna Khamis Mohamed, Zohor Zakaria Elsaeed(2023).
Sickness Presenteeism and Job Performance among Nurses at Tanta University Emergency Hospital.
https://tsnj.journals.ekb.eg/article_307372.html

皆さんも、調子が悪くても出勤してしまう日があると思います。

そのような日は100%のパフォーマンスを発揮することが難しくなります。仕事に集中できなかったり、仕事のスピードが遅くなったり、いつもなら起こさないようなミスを犯してしまったりするのではないでしょうか。

仕事がうまくいかないと、上司や同僚から注意を受けて悲しくなったり、自分の能力の低さを実感したり、もう働けないと悲観的になってしてしまうかもしれません。そのような「自分はもうダメなんだ」という考えに陥る前に、メンタル不調や風邪や頭痛などの体調不良を疑ってみてもよいのではないでしょうか。

周囲に対しても同じです。以前よりパフォーマンスが低下しているように感じる部下や同僚がいたら、体調不良が原因かもしれないことを考慮に入れ、仕事ができていないことを指摘する前に、まずは「体調でも悪いのか?」と声をかけてみると良いでしょう。