2025年5月17日、弊社株式会社フィスメックの従業員が「第98回日本産業衛生学会」において、東京大学大学院医学系研究科デジタルメンタルヘルス講座(外部リンク)との共同研究の成果を発表いたしました。
詳細は以下の通りです。
学会名称:第98回日本産業衛生学会
開催日時:2025年5月14~17日
開催場所:宮城県仙台市
発表方法:口頭発表
演題名 :日本型従業員エンゲージメント尺度の開発と信頼性・妥当性の検証
日本型従業員エンゲージメント尺度の開発と信頼性・妥当性の検証
樺沢 敏紀1)、屋良 剣吾1)、尾崎 直広1)、飯田 真子2)、櫻谷 あすか3)、今村 幸太郎3)、川上 憲人3)
1)株式会社フィスメック、2)東京大学大学院 医学系研究科 精神保健学分野、3)東京大学大学院 医学系研究科 デジタルメンタルヘルス講座
【目的】
日本における従業員エンゲージメントの定義に基づいた日本型従業員エンゲージメント尺度を新たに開発し、その信頼性および妥当性を検証した。
【方法】
日本における従業員エンゲージメントの定義に関する情報収集および国内外の従業員エンゲージメントに関する文献レビューから得られた情報をもとに、産業保健領域の研究者とサービス提供者で項目案作成のための議論を行い、日本経済団体連合会(2020、2023)、経済産業省(2020)、および岩本(2021)による従業員エンゲージメントの定義に従ってそれらの文言を反映した日本型従業員エンゲージメント尺度9 項目を作成した。インターネット調査会社のモニターに登録されている労働者を対象にウェブ質問紙調査を実施し信頼性・妥当性を検証した。内的一貫性(クロンバックのα係数)および再検査信頼性(級内相関係数)を検証し、因子数の抽出基準を固有値1 以上とした探索的因子分析により抽出された因子構造について、確認的因子分析を実施しモデルの適合度を検証した。また、収束的妥当性を検証するために、心理的ストレス反応、仕事の満足感、ワーク・エンゲイジメント(以上を新職業性ストレス簡易調査票により測定)、心理的安全性(職場の心理的安全性尺度により測定)、および仕事のパフォーマンス(WHOHPQ により測定)との相関係数を算出した。
【結果】
2024 年7 月にウェブ質問票によるアンケート調査を実施し208 名から回答を得た。初回調査から2 週間後に再検査信頼性を検討するための追跡調査を行い106 名が回答した。回答者の平均年齢は41.4 歳(標準偏差=12.6)で、男女比は均等であった。約半数が大学卒以上、既婚、事業場規模300 人以上の職場に勤務していた。探索的因子分析の結果、第1 因子の固有値が5.7、第2 因子の固有値が0.58 となり、1 因子構造を採用した。各項目の因子負荷量は0.68~0.86、Cronbach のα=0.93 であり、級内相関係数は0.88 であった。1 因子構造を想定した確認的因子分析の結果、SRMR=0.02、RMSEA=0.03、TLI=0.99、CFI=0.99、GFI=0.97、AGFI=0.95 であった。日本型従業員エンゲージメント尺度と他の
尺度との相関係数は、心理的ストレス反応でr=-0.37、仕事の満足感でr=0.56、ワーク・エンゲイジメントでr=0.53、心理的安全性でr=0.53、仕事のパフォーマンスでr=0.36 で、全ての尺度と有意な関連がみられた(p<0.01)。
【考察】
本研究で新たに開発された日本型従業員エンゲージメント尺度は十分な信頼性および妥当性を示した。本尺度は日本の労働者の従業員エンゲージメントを測定するために有効であると考えられる。
【謝辞】
本研究は、東京大学大学院医学系研究科デジタルメンタルヘルス講座と(株)フィスメックの共同研究として実施された。